ボルボXC60は、2008年に登場したプレミアムミッドサイズSUVであり、ボルボにとって販売台数・ブランドイメージの両面で最も重要なモデルのひとつです。大型のXC90とコンパクトなXC40の中間に位置し、「ファミリーカーとしての安心感」と「都市での取り回しやすさ」を高次元で両立した存在として、登場以来、世界中で高く評価されてきました。

初代XC60が誕生した2000年代後半、世界的にSUVの需要が急速に高まる中で、ボルボは単なる流行ではなく、「人のためのSUV」というアプローチを選びました。それは、頑丈さや走破性を誇るのではなく、事故を未然に防ぎ、すべての乗員に安心と快適を提供するという、ボルボの思想に基づいたものでした。

初代モデルには、世界初の追突回避支援システム「City Safety」が標準装備されており、時速30km以下での自動ブレーキを可能にしたことで、都市部での低速事故リスクを大幅に軽減。この技術はのちに他メーカーにも広がり、現代の先進運転支援システム（ADAS）の礎となるものでした。また、力強いラインが印象的なデザインや、優れたシート快適性、使いやすい荷室空間などが評価され、特に欧州・北米市場を中心にベストセラーとなりました。

2017年に登場した現行の2代目XC60は、ボルボが新世代プラットフォームSPA（スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ）を用いて開発したモデルのひとつであり、XC90で築いた新しいブランドの世界観を、より扱いやすいサイズに凝縮したかたちとなっています。

エクステリアは、T字型のLEDヘッドライト「トールハンマー」や、引き締まったボディライン、端正なグリルが組み合わされ、上品かつモダンな印象。大きすぎず小さすぎないバランスの取れたサイズ感は、都市部でも自然の中でも場面を選ばず馴染みます。

インテリアには、北欧の美意識を反映した素材使いとレイアウトが施されており、ナッパレザーや天然ウッド、クリスタル製シフトノブといった素材の温かみと、縦型センターディスプレイやGoogleベースのインフォテインメントといった先進性が共存しています。すべてが「過剰にならない快適さ」を意識して設計されており、静けさと落ち着きに包まれた空間が広がります。

安全性能はボルボの根幹。衝突回避支援、自動ブレーキ、車線維持支援、ブラインドスポットモニター、クロストラフィックアラート、パイロットアシスト（半自動運転支援）など、IntelliSafeと呼ばれる安全技術群が標準装備されており、ドライバーだけでなく周囲の人々の命も守るというボルボの思想が貫かれています。

XC60は、日常の中で過剰に主張することなく、使う人に寄り添い、確かな価値を静かに提供するクルマです。上質であること、安心であること、長く付き合えること──そうした「本物」を求める人にこそふさわしい一台であり、ボルボの現代的な哲学と技術が最もバランスよく結実したモデルのひとつといえるでしょう。